おつかれさまドレミファインバータ
京急のイベント「ありがとうドレミファインバータ♪」は、昨日終了したようですが、嬉しいことに、今日も京急1033は営業運転しているとのこと。時差出勤なので、運行時間には合わなくて、なかなか逢えませんが、もう一度あの音色が聞きたいもの・・・
プラレールは購入しましたが最後になんとか生音が聞けないものか・・・
願懸けとして、今日は「モータ制御時の電磁騒音を快音、またはアラート化」することが効果、または作用として記載されている特許出願についてとりあげます。
鉄道分野では、VVVF(可変電圧/可変周波数)インバータ装置でモータを制御するのが主流で、この方法では、モータに入力する三相交流の電圧や周波数を適切に制御し、モータの回転力・回転数を調整できるとのこと。VVVFインバータ装置のスイッチング素子には、現在では、SiC半導体が用いられるようになってきていますが、昔はGTOサイリスタが用いられており、このGTOサイリスタを採用したインバータでは、素子の特性上、周波数を可聴周波数よりも高く制御することが難しく、騒音が気になりやすかったとのこと。そこで、シーメンス社では周波数等の制御により、この騒音が音階に聞こえるように調整したインバータを製造し、京急(やJR東など)に提供したようです。騒音制御:Vol.29, No.4(2005) P.287-289には、「登校時の女子校生の間では「幸運の電車」として評判」との記載があり、昔から女性にも好評であったことがわかりました!!
→https://www.jstage.jst.go.jp/article/souonseigyo1977/29/4/29_4_287/_pdf
ところが・・・出願人「シーメンス」で調べた結果、欧州でも日本でもそれらしき出願を見つけることができず・・・上記雑誌にも「当社としても特に積極的な宣伝等は行わずに現在に至っている。」と記載されていることから、シーメンスは制御システム「SIBAS」の商標登録はしているものの、「歌う電車」の技術的思想は出願していないという(自分の中での)結論に至りました。
残念ながら、シーメンスの出願は見つけることができませんでしたが、日本の出願人の「歌うインバータ」に関する出願はいくつか見つけることができました。
「電磁音を制御して音楽のように聞こえるようにする」ことが明確に記載されている最初の日本出願は、日立製作所の特開平2-211092(特許2810081)だと思います。この出願の請求項6は、
「・・・前記PWM電力変換装置のPWM制御の搬送波周波数を音楽的な音程の関係、例えばド、レ、ミ、ファ、ソ、ラ、シ、ドの関係の音となるように変化させるようにしたことを特徴とするPWM電力変換装置。」
となっています。
日立以外では、明電舎と東芝が電磁騒音をメロディにするコンセプトの出願をしています。
特開2001-025258 (特許3893801)
「PWMインバータ」 明電舎
特開1992-200294
「 インバータ装置」 東芝
電磁騒音を利用する発想は、電車に止まらず、電気自動車にも展開されていったようです。また、実現が可能かは別として、電磁騒音を警戒音やメッセージなどに変えるというアイデアも1980年代後半にはすでに出願されていたようです。どちらも最初は日立から出願されており、後に自動車メーカも、数は多くはないものの、同様のコンセプトの出願をしていました。
「インバータ装置→モータ」の静寂性は高くなっても、電磁音を利用した音情報発生システムは細々と検討されていたのかな・・・自動車への応用の特許は例えば、
特開1995-177601 (特許3107262)
「電気車制御装置および電気車」 日立
特開2018-026931 (特許6828297)
に記載されています。
「電磁騒音の利用」というコンセプトは特許出願としては、そこそこ見つかったのですが、実製品として私が知っているのは、シーメンスの「ドレミファインバータ」のみ・・・Web検索しても日立製の「歌うインバータ」は見つからずでした。出願権利化のみで終わってしまったのでしょうか・・・
また、2018年からEV走行が可能な自動車に適用が義務付けられている「車両接近通報装置」の主流は、スピーカーから発せられる擬音ということで、残念ながら電磁音ではなさそうです。(ポルシェのタイカンには、モータ音増幅技術が用いられているとの情報がありますので、また調べてみようと思います。)
もう少しで日本からは消えてしまう「ドレミファインバータ」。いい音をありがとう!!最後まで応援しています。