バウムクーヘンと特許・実用新案
もともとバウムクーヘン紹介のブログを書くために利用登録した「はてなブログ」。
でもなかなか書く気が起こらないまま数年放置していました。
当初の目的を違ったかたちで達成することとなりますが、今日は「バウムクーヘンと特許・実用新案」をテーマにブログを書こうと思います。
- バウムクーヘンに関する特許・実用新案の出願件数 (5庁+ドイツ)
- 出願数推移と出願人ランキング (日本)
- どのような出願が多いのか?
1. バウムクーヘンに関する特許・実用新案の出願件数 (5庁+ドイツ)
株式会社ユーハイムの創始者カール・ユーハイム氏によってドイツから日本に伝えられ、日本で独自の進化を遂げたバウムクーヘン。バームクーヘンに関する特許・実用新案は、各国の特許庁にどの程度出願されているのでしょうか。5庁(米国(US)、欧州(EP)、日本(JP)、中国(CN)、韓国(KR))とドイツ(DE)への出願数を調査してみました。
結果は次の通り!日本がダントツです!!
フルテキストで「baumkuchen」のみを検索するのではなく、「tree cake、log cake、spit cake、layer(ed) cake、annular cake」などの類義語を入れたり、特許分類IPC(CPC)のA21B5/04やちょっと広いですが、A21D13/10以下を入れたりしてもこの結果でした。中国や韓国は原語で検索したわけではないので、原語で検索すると多少増えるかもしれませんが、それでも結果が数倍になるということは考え辛く、日本への出願件数が一番多いのは確実だと思います。(中国、韓国とも検索は、EspacenetやGooglePatentでおこないましたのでタイムラグもあると思いますがそれを考慮しても日本は多い。)
バウムクーヘン発祥の地ドイツでは、Espacenetで見る限り、20件ほど出願がありましたが、日本の出願人の出願は見つかりませんでした。ただし、欧州特許庁への出願は、食品機械メーカであるコバードがおこなっています。
元の日本出願:特許5431608 「層状食品の製造装置及び製造方法」 コバード
内容は、芯棒(バウムクーヘンを焼くときに液体生地を塗布して焼成成形するための棒)に形をもたせ、かつ焼成生地に対して成形具を押し当てて成形することで、ハートや星形のバウムクーヘンを製造する装置・方法です(下図参照)。コバードはこの出願を米国、欧州、中国、韓国、そして台湾で権利化しています。
一方、ドイツから日本へは、大手菓子メーカのクーヘンマイスターが効率的にバウムクーヘンを製造できる方法と装置に関する出願(特許5661814)をしています。クーヘンマイスターは量産型のバウムクーヘンつくってますもんね・・・ただし、やはりドイツではクリスマスなどの「特別な日」にバウムクーヘンを食べるのが普通なので、クーヘンマイスターのホームページでも「祝祭の日に」というカテゴリでバウムクーヘンが紹介されています。ちなみに、クーヘンマイスターは、眉毛コアラばかりのお菓子「KoalaKakao」をつくっているメーカとして、一部の日本人には有名です(笑)
2. 出願数推移と出願人ランキング (日本)
次に日本出願の出願数の推移をみていきましょう。バウムクーヘン関連出願のピークは、1980年代と2010年代にあります(2020年代はまだこれから出願&公開されます)。2000年代後半~2010年代は、キヨスクやコンビニなどでも安価なバウムクーヘンが手軽に買えるようになったり、クラブハリエ、ねんりん家や治一郎などのブランドが流行したり、バウムクーヘンのバリエーションが一気に増えた年代で、出願件数もこれに比例するように増えています。
また、1980年代は、出願の内容を見てみると、これまでほとんどなされていなかったバウムクーヘン生地の組成やバウムクーヘンの梱包に関する出願が増えてきていることが分かりました。生地の組成に関する出願では、小麦粉や米粉など澱粉成分の粒径や、ショートニングなどの油脂成分の融点、発泡剤の組成を調整することで、生産性を向上させつつ風味、品質なども高められるような工夫をしています。ドイツでは、バウムクーヘンの定義が厳格に守られているため、ショートニングなどの使用は許されませんが、日本では定義が緩いので、手ごろさやバリエーションを出す点では有利となり、発明・考案も生まれやすいのかもしれません。
出願人ランキングでは、元祖バウムクーヘンメーカのユーハイムと食品装置メーカの光岡機械製作所が同率一位でした。続いて「ねんりん家」で有名なグレープストーンとタッグを組んで、共同出願も4件ある食品装置メーカのマスダックと、バウムクーヘン製造機メーカでは有名な不二商会が3位。5位以下では、日清オイリオやカネカなどの食品・化学メーカも、バウムクーヘン用の油脂や起泡剤、乳化剤、米粉のバウムクーヘンの米粉に関する出願などの出願がありました。
ちなみに、ユーハイムの2020年代の出願は、今年の3月に公開されたAI搭載で職人の技を機械学習で習得してよりよいバウムクーヘンを焼く装置「THEO」関連の出願です。画像処理+機械学習を使った業界初のバウムクーヘン焼成機です!!
特許6876208 「バウムクーヘン焼成機の制御装置、制御方法及び制御プログラム、並びにバウムクーヘン焼成機」 株式会社ユーハイム
3. どのような出願が多いのか?
最後に、出願内容を大まかに分類したいと思います。今回の記事では、内容で出願を大まかに次の5種類に分類しました。
1. 装置:主にバウムクーヘンを効率よく量産するための装置、またはバウムクーヘンの品質(外観、風味など)を向上させるための装置に関する出願(炉構造、芯棒などを含む)
2. 組成:生地成分の工夫により、バウムクーヘンの品質を向上させたり、生産性を上げたりする出願
3. 構造:フルーツ入りバウムクーヘンや略球状のバウムクーヘンなど構造や形に特徴がある出願
4. 梱包:バウムクーヘンを型崩れがないように輸送、または陳列するための容器等に関する出願
5. 製法:装置に関する請求項がない、製法に関する出願はここに分類 (1が優先)
分類後、それぞれの割合をグラフ化した結果、やはり装置に関する出願が一番多く、次に組成、構造が続く結果となりました。バウムクーヘンの一般への普及に関して、装置メーカや食品メーカが大きく貢献していることが見てとれます。
以上、バウムクーヘン関連の特許・実用新案出願について概要をまとめてみました。
お読みいただきありがとうございます。